ツチノコユカイ
夕風吹きすさぶ、河川敷。
夕日がきれいだった。
夕日はきれいだった。
「首とったりー!!」
「勝ったな」
「久しぶりに楽しかったー」
「疲れたけどすっきりした」
「高校のチャラい人ってこんなもんなんですか?」
戦闘終了後。
各々コメントをもらし、得心がいった、という顔をして夕日を見つめた。
ていうか。
「何で俺たち、無傷なんだよ・・・!」
そう。
20人前後はいたのに、俺たちはドロだらけの埃まみれになりつつも、完全なる圧勝だった。
「アレよアレ、少数精鋭!」
「強いってよいよね☆」
ツララとシンゴが心底楽しそうな笑顔で言ったが、実際こいつらは二人でほとんどの敵を倒していた。
俺・ジュン・中島・ハヤトが2人づつ。
残りの12人は、言うまでもない。
『一人あたま5人はやれ』と中島が言ってたが、それ以前に敵が少なかったのが、幸運だったのか何なのか。
それにしても・・・
「お前、何でそんな強えーんだよ・・・!」
俺はツララに言った。
こいつはあれだけの人数と戦って、疲れるどころか「まだいける!」といいたそうな顔をしている・・・。
「だってあちしエスパーだもん☆」
「何が!?」
「じゃあ修行の成果?みたいな何かそんなん!」
「適当言うなー!!」
フハハハハハ!と高笑いするツララに、俺はうなだれた。
マジで何なんだ・・・コイツは・・・。
「会長に何を聞いてもちゃんとした返答はしないぞ」
「お前は何か知らないのかよ?」
諭すように言ってきた中島にそう返すと、
「世の中には知らなくていいことがたくさんあるのだ。だから聞かない。というか聞きたくない。」
と、真顔で言った。
過去に何かあったんだろうか。
「よっし、じゃあ今日は引き揚げよっかー」
「って、ちょっと待て」
「もー!何よ!」
『帰ってお風呂』の気分を害されたらしいツララは、ムスっとした顔をした。
いや、俺だって風呂に入りたい。
入りたいけど、これだけは聞いておかないといけない。
「明日の作戦とか、そういうのはないのかよ?今日なんてこんなことしてるし」
「あんた、現代っ子なのにつまんない子ねー」
「うるせぇよ!」
「リュータ、心配しなくても大丈夫だ。」
「中島・・・」
「この僕が、何の保証もなくこの無茶苦茶な作戦にGOサインを出したと思うか?この僕が?」
「何で2回言うんだ」
「何となく」
でも、確かにそうだ。
ツララは無茶苦茶だが、中島には一応常識がある。
『紙ヒコーキ』が絡まなければ。よく知らないけど。
「ま、大丈夫っしょ。ナカジが言うんなら」
「どうせ何か策でも考えてるんだろうし」
純真にも言われ、何となく大丈夫かな、という気になったところで、
「あとの祭りって言いますもんねー。何かあってもみんな一蓮托生ですよ、僕以外☆」
だって僕、中学生で優等生ですから☆とハヤトが笑いながら、言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チクショオ!!!」
俺は夕日に向って、吼えた。

翌日。
昨日ハヤトが余計なことを言うもんだから、心配で寝付けなかった。
チクショオ。
俺は目をこすりながら、校門を見つめて、ため息をついた。
何もないといいなぁ・・・。
そんなことを考えながら歩いていると、誰かが挨拶をしてきた。
「おはようございます!」
「はよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はァ!?」
後輩か何かかと思ったら、声をかけてきたのは昨日ブチのめした不良の一人だった。
え、ナニ!?何なん!?
「え、すいません昨日のことはナシに!話せば分かる!」
「昨日はすんませんでした!今日からはアネさんの下、平和な学園づくりに尽力させていただきます!」
「・・・・・アネさん?」
アネさんて・・・まさか・・・
「ツララさんですよー!実はウチの頭がツララさんに惚れ込んじまって、今日からウチはツチノコ研究会の傘下に入るって」
「頭!?」
いつの時代だよ・・・!昭和!?
つーか、アネさんて・・・。
「だからまァ、昨日のことはチャラに、って。今の時代、女の子と拳で語れる日が来るとは思ってなかったっすよー」
まだまだ人物はいるもんですねー、とかそいつが色々喋っているが、その声は俺の耳に届いていなかった。
ツララ。
あいつ本当に、何者なんだよ・・・。
というわけで、何かこんなことに。
続きが1年ぶりってどういうこと・・・!
すみません・・・。